政府は2日、安全保障上の輸出管理で優遇措置を取る「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定した。7月上旬の半導体材料の輸出管理の厳格化に続き、対韓国規制強化の第2弾で、韓国の文在寅大統領は「全面的に日本政府に責任がある」と激しく反発。日本政府も韓国の反発を押し切っての決定で、双方に歩み寄る余地のない“破局”となった。
日本がホワイト国の指定を取り消すのは韓国が初めて。7日に政令を公布し28日に施行する。政令改正の閣議決定後に会見した菅義偉官房長官は「他のアジア各国や地域と同様の扱いに戻すもので、禁輸措置ではない」と強調した。
日本の決定から間を置かず、韓国も緊急閣議を開催。文大統領は「事態を悪化させる無謀な決定だ。今後起きる事態の責任も全面的に日本にある。盗っ人たけだけしい」と強く非難。韓国は日本を世界貿易機関(WTO)に提訴する方針と、日本を同様にホワイト国指定から除外する意向を表明した。
安倍政権は表向き、元徴用工訴訟問題の対抗措置との見方を否定し、安全保障上の貿易管理に関する国内運用の見直しと主張。ただ、外務省幹部は「文政権は歴史問題を蒸し返し、合意をことごとく破っている。もう我慢の限界」と語り、いら立ちの表れであることを示した。
思い切った言動を取る両国だがリスクも背負う。日本からホワイト国除外された国に対し、軍事転用の可能性がある工作機械などを輸出する日本企業は、契約ごとに経済産業省からの許可が必要になる。韓国に対しては半導体材料3品目の輸出規制強化に続き、優遇措置解除の対象は1000品目以上にのぼる。今後、韓国には半導体に次ぐ主要産業である石油化学製品や自動車も大きな打撃を受けるかもしれないという危機感が潜んでいる。
一方、世耕弘成経済産業相は「日本企業への悪影響は基本的にない」と説明。正規の手続きで輸出は続けられるとの見方がある。だが「輸出遅延の影響が出てくるのでは」との不安も産業界にある。関係の悪化による観光産業の影響への懸念も。すでに韓国人ツアー客に人気だった長崎県対馬市では観光客が減ったと伝えられている。
双方に不安材料がある中で、事態は安全保障に及ぶ可能性も出てきた。韓国側が今月下旬に更新の判断期限を迎える日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の見直しを示唆。同協定は米国も維持を求める日米韓の安全保障の基盤。北朝鮮が相次いで短距離弾道ミサイルを発射する状況下、展望のまったく見えないチキンレースに突入した。
▼ホワイト国 軍事転用できる物品や技術の輸出を巡り、日本政府が手続き簡略化などの優遇措置を取っている国。大量破壊兵器に関する条約などに加盟していることを要件に、貿易管理を適切に実施し兵器拡散の恐れがないと判断すれば指定する。現在のホワイト国は米国や英国などの欧米諸国のほか、韓国やアルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランドなど計27カ国。韓国は2004年に指定された。
《「ホワイト国」の通称、今後使わず》経済産業省は2日、安全保障上の輸出管理で優遇措置を与える対象国について「ホワイト国」の通称を今後使わないと明らかにした。貿易相手国を輸出規制のレベルに応じ、グループAからDの4段階に分類することとした。ホワイト国はグループAに該当。ホワイト国の除外が決まった韓国は28日から一定の輸出管理制度があると判断されるグループBになる。Bに該当するのは10~20カ国程度で、Dは北朝鮮やイラン、イラクなど10カ国。A、B、D以外の多くの国がCに分類される。
《バンコクで外相会談 米国なだめるも…》河野太郎外相、米国のポンペオ国務長官、韓国の康京和外相がタイの首都バンコクで3カ国外相会談を行った。ホワイト国除外決定後の開催。ポンペオ氏は「日韓両国が協力して前に進むことを促したい」と日韓の対立緩和を求めたが、日本外務省によると具体的な仲介案は示さなかった。米側は、日韓の対立がこれ以上深刻化すれば、北東アジアの安全保障を巡る3カ国連携に支障を来しかねないと懸念を強めている。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース